明治アポロに畏怖する
京都市は左京区、鴨川デルタのちょうど真東に位置する出町柳駅で、YouTubeの動画広告を真剣に眺める男がいる。愉快で楽しい児童向けのお菓子CMを仏頂面で眺める男がいる
何を隠そう、この僕である
「CMを自分で選択し、比較し、分析する」という中間レポートの存在を完全に忘れていた僕は、全神経を15秒のCMに集中させていた。時刻は19時15分。レポートの提出期限は、23時59分だ。間に合うか? いや、間に合わないだろう
何故なら僕はこのまま電車に乗らなければならないし、その電車が向かうのはバイト先である祇園のバーだからだ。バーでアルバイトをしていると言えば、相手の反応は決まってこうだ
「え〜おしゃれ〜!」
「すご〜い!」
「かっこいい〜!」
多分みんなが想像しているのは、目を瞑りながら華麗な手つきでにシェイカーをシャカシャカする、バーテンダーの佇まいだろう
しかし残念ながら僕の持ち場はキッチンであり、狂ったように6時間ピザを作り続けるというのが僕の仕事内容である
バーテンダーなんて、もはや別の銀河系の話だ。ドリンクに触れることすらないし、さらに言えば「シェイカー」という名称すら知らなかった。この偏差値の低い検索履歴を見れば一目瞭然だろう
一生ピザを作ることと、中間レポートを提出することとを比べたらどちらが重要か。明らかに中間レポートだろう。猿でも分かるし、何ならプランクトンでも分かる
しかし、これまでのブログで数回触れてきたが、うちのバーの経営者はヤク○ザだ。当日に休み連絡をしようものなら、次にみんなに会うとき僕はピッツァになっているだろう
つまり、出勤という手札しか僕には残されていない。完全にジョーカーだが、ジューサーでピザソースにされるよりはまだマシだろう
さらに不幸なことに、シフトは19時半から23時半までである。バイト後全力で駅まで走り、電車の中で全ての分析を終わらせ、全力疾走で帰宅したとしても時刻は23時57分。パソコンの起動にかかる時間やワードを立ち上げる時間、提出用のサイトを開く時間を考慮するとタイムリミットは30秒。この間に2000字を打って提出しなければならない。もはやスパコンである。もう9億パーセント間に合わない
とはいえ、ピッツァになって霊柩車でデリバリーされるのはゴメンだ。遺体と対面した遺族に「綺麗な死に顔...いや死にピザね」と言われるのだろう。それだけは絶対に避けたい。プランクトンでも分かるだろう。火葬した時にこんがり焼き上がるなんて、完全に御法度だ。 ピザハットだけにね
しかし、僕は突然YouTubeを閉じたかと思うと、メモアプリを立ち上げ、人類とは思えない速さで文字の入力を始めた。僅かに生じた畏怖の念が、目前に忽然と立ち現れ、蠱惑的な眼差しで私を泥梨に引きずり込もうとしてきたからだ。征服から逃れようと無我夢中で文字を打ち込む。それはさながらスパコンのような速度で。
何を恐れているか
それは
「アポロ」だ。
食い入るように見つめ、解析していた「アポロ」の動画広告は、私たちが信じて疑わない常識の否定を、密かに我々に示していた
僕は
僕はただ、ただぼんやりと動画広告を見つめていた
衝撃が走った。
このお菓子は
捏造だと、
アポロ11号の月面上陸が捏造であったと、そう示しているのではないか
そんなことあるはずがない
そう思った読者もいるだろう
しかし残念なことに、私たちの世界は嘘で満ち満ちているというのが実態である
私がしばしば観ていたクイズ番組によく出演していた、若槻千夏という女性タレントがいる
彼女は今、自身のアパレルブランド「WC」(トイレ感が否めない)を展開するなどして活躍しているが、私が彼女に関して特に印象に残っているのは、そのクイズ番組で披露したピアノの腕前である。それはそれは美しく、心地よい旋律であった。
そして何よりも、「若槻千夏」という名前の美しい響きに心地良さを感じた私は、いつの間にか彼女に対してかなりの親近感を抱き、信頼を寄せていた
しかし、現実は残酷だ
彼女の本名は「栗原千春」である。
これを知ったのは、小学生の時だ
嘘ばかりついていたということから「嘘つき」と語感の似た「若槻」、そして夏が好きだから本名をもじって「千夏」にしたというのが芸名の由来である
千春
千夏ではななかったのか
気に入っていた「若槻千夏」の語感が偽りのものであり、しかも「嘘つき」に由来するのだと知り、当時の僕は相当なショックを受けた。信じられなかった。中学時代は卓球部に所属していた、という彼女のウソみたいな事実も全部霞んで見えた
このように、私たちが生きる世界は「若槻千夏の本名」という究極にどうでもいいことまでもが、嘘で塗り固められている
私たちが生きているのは、嘘が氾濫する社会であると、そう言っても過言ではない
そしてアポロは、
アポロ11号をモチーフとして生まれた明治アポロは、
月面着陸という「虚構」を我々に訴えるお菓子なのである
アポロ11号が月面着陸に成功したとされるのは1969年
そしてそれに先駆けた1966年、明治は、ギリシャ神話の予言の神であるアポロンから、「アポロ」を商標登録した
しかし、ここで疑問が残る
何故、月面着陸よりも先に商標登録を行ったのか
何故、「アポロ11号」ではなく、ギリシャ神話の「予言の神アポロン」を名前の由来としたのか
そうか
そういうことなのか
アポロ計画は神話のような崇高な「作り話」であると、そう言うのか
そして、アポロの生産者はそれを月面着陸の3年前にまさに「予言」していたと、そう言うのか
それだけではない
「アポロちゃん」というウサギのキャラクター
これは、
月の表層にウサギを見出して喜ぶ私たちを、
すなわち
物事の表面しか見ていない私たち人類を、
揶揄しているものなのか
どういうことだ
アポロ
説明しろ
焦燥感に駆られた私は、アポロの製品ページに飛んだ
なんと
なんということだ
「手作りアポロ」
アポロ計画は人の手が加わった偽造工作、捏造であると
やはりそう示唆しているのか
じゃあ誰だ
裏でこの陰謀を操っていたのは
誰なんだ
しばらく調査していると、同じく、ウサギをマスコットとする企業を発見した
ピンと来ないかもしれないが、この製薬会社はアレジオンやハイチオール、エスタック、EVEクイック頭痛役を製造販売している、国内主要医薬品メーカーである
そしてそのエスエス製薬がマスコットのモチーフとしたのは、「因幡の白兎」という日本神話である
因幡の白兎のストーリーは以下の通りだ。
淤岐島から因幡国へ行くため、ウサギは鰐鮫に嘘をついてその背を渡ったが、最後の鰐鮫にその嘘がバレて皮を剥がれた。痛みにもがくウサギは八十神の嘘の教えを信じて潮を浴び、さらに走る激痛に泣いていたが、ちょうどそこで大国主命に救われる
嘘
嘘
嘘
やはり嘘にまみれたストーリーである。
それだけではない
1967年に考案されたエスエス製薬の4代目「シェイクハンドピョンちゃん」は、ロケットをモチーフにしており、背景にあるのは明らかにアポロ計画そのものである
なぜ4代目にして初めて、ウサギを月と関連させたのか
4と月から浮かび上がるもの
そう
ピアノを弾く主人公の物語
嘘
全てが嘘と繋がっている
そして
マスコットキャラを通じて
物事の本質を見抜けない私たちを嘲笑っていた
いや
いや、違う
違う
私たちはまだ、核心にはたどり着いていない
思い出せ
4代目ピョンちゃんを
『四月は君の嘘』を
S S
シェイクハンドピョンちゃん
ピアノ
まだ分からないのか
すなわち、
春 → 夏
卓球部
特技 ピアノ
そう
そして彼女のブログのホーム画面は
「ウサギ」
いや
まだだ
まだ終わらない
思い出せ
アポロの動画広告を
出演していた女性を
もうお分かりだろう
「嘘つき」
そう
捏造の黒幕
アポロ計画捏造の黒幕
それは、若槻千夏だったのである
この広告は
若槻千夏がアポロを操る描写を含むこの広告は
アポロ計画を裏で操る首謀者を、密かに我々に示した、イデオロギー広告であったのだ
さて
ここまで解明してしまったので
私は近いうちに巨大な圧力によって粛清されてしまうだろう
若槻千夏へ
最後に一言だけ言わせてほしい
水に流してくれませんか?
(WCだけに)